2006年10月22日

危ない体操

いろいろあって長らく休んでおりました。少し落ち着いたのと、どうしても挙げておきたい記事があり、またもどってまいりました。

ちょっと前に某テレビ番組で紹介された体操を真似て、すぐ腰痛になったという方が何人かいらっしゃいました。多分日本中で同じことが起きているんだろうなあと思います。(イナバウワーが流行ったときはウチには一人も来ませんでしたが…)

何でも「腸腰筋ダイエット」とかいう触れ込みで、太ももを高く振り上げるようなエクササイズを毎日30回だかするものだったそうです。私は見ていなかったので、その番組のウェブサイトを覗いてみたのですが、普通にやれば腰痛になる人が続出するのは間違いのない内容でした。よくこんな内容を恥ずかしげもなく無責任に垂れ流すものだと感心します。

私も患者さんには体の中心にある大事な筋肉として、腸腰筋(腸骨筋、大腰筋)を使うように多たびたびアドバイスをしています。その際は1種類か2種類の単純な体操を、原則的には必ずその場で見せて真似をしてもらい、フォームをチェックし、運動時の感覚を聞きながら行います。痛みが生じるようではもちろん意味がありませんし、太ももやお尻、腹部などに「重くてしんどい」という感覚も起きないように動かしてもらいます。そうすると「こんな楽なのでは運動にならないのでは?」と聞かれることがしばしばあります。運動なのだからつらいのが当たり前という感覚は、この国の民の真面目さをあらわすわかりやすい一例です。

実際は腸腰筋で太ももを挙げるとそれまでより足の重さが軽く感じるのです。

足を挙げるだけなら腸腰筋を使わなくても、太ももの前面にある筋肉で持ち上げることができます。その際に腹直筋というお腹の筋肉を縮ませて、骨盤を後ろに倒しつつ上のほうへ持ち上げるという、実にしんどい動作をしていることが多いものです。腰痛になる人は日ごろからそういう挙げ方をしています。腸腰筋は体の内部にあるため意識するのがかなり難しいところです。ふつう筋肉を意識するというのは、コリ、痛み、緊張感、痙攣のような異常時にもっともはっきりしますが、ストレッチのような伸展動作でも感じることができます。前屈をしたときに太ももの裏側に走るあのツッパリ感や痛みは、ハムストリング筋が浅い(皮膚に近い)層に走っていることと、角度を強めれば強めるほど限度を超えて伸ばされる力がかかるために、誰でもとてもわかりやすいものです。それに比べると、超腰筋は背骨の前側という“見えない“場所にあり、構造上単独で限度までの伸展をストレッチで感じることは難しくなっています。

腸腰筋を意識できる人は、前述のエクササイズでも問題はおきないでしょう。でも普通はいきなり意識するのは難しいものです。まず今まで力を入れていたところが脱力できるような体制を作ったやることが必要です。この力を抜くというのも、また難しいのは事実です。(私が一番苦手なことだったので、よくわかります)そういう意味では健康なときより「力を入れると痛みがでる」時のほうが、強制的にでも的確な運動を発見しやすいチャンスなのかもしれません。

昨日も「寿命遺伝子を伸ばす骨盤の体操」とか銘打って、尻歩きを勧めていました。土曜のオンエアは止めたほうがいいですね。翌日は休みの治療所が多いでしょうから。



posted by 徒手空腹 at 16:24| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 運動を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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