2006年04月25日

マクロビと牛乳 続き

前回の記事の翌日に電車に乗ると、マクロビオティックということばを二度見かけました。一つは雑誌の吊り広告、もう一つは某私鉄が発行しているフリーペーパーの特集記事でした。雑誌の方では「マクロビって何だ?」というような口調の見出しでした。

翌々日の月曜日には読売新聞の朝刊で、牛乳の売り上げ低下で、酪農農家が悲鳴を上げているという記事が取り上げられていました。やはり、というかもちろんというか、マクロビオティックなど出てきません。牛乳が売れないのは、少子化と飲料商品の多様化が大きな原因と、極めて真っ当な指摘がありました。酪農農家の方はホントに大変でしょうし、気の毒にも思いますが、だからと言って無理な普及を今さらしてもどうだかという気もします。日本の食料自給率から考えても、乳牛の餌に必要な牧草地などは、人間の食べられる農産物が取れるよう、国は補助してでも転換していった方が良いと私個人は思っています。しかし、酪農家にしても、ただ単に生活のためでなく、誇りや情熱を持って牛を育てている方々がたくさんいるわけですし、他にも現実にはいろいろな問題があるでしょうから、あまり無責任なことはいえません。

そこで前回、終わりのほうでちょこっと触れた話に戻ります。マクロビが「流行」に終わっている人と、そうでない人の違いに関してです。

最初にお断りしておきますが、私自身は菜食を貫いているわけでもありませんし、玄米を主食にしてもいません。玄米菜食でも良いかなとは思いますが、今は積極的に実施する意思も理由もないので、わりと食べたいものを食べています。(それでも、他の人に言わせると、随分と野菜をたくさん食べているらしい)

自分の話はさておいて、マクロビオティックに飛びついた人の中には、「マドンナや坂本龍一が愛好していて、欧米ではだいぶ前から注目されている健康法で、元気できれいになれそう」という理由で始めた人もいるでしょう。

それなら昼のTV番組で「更年期には大豆イソフラボン」と唱和しているのと変わりはありません。それだけで長続きする人は少ないでしょう。

古くからマクロビオティックや玄米正食などを真剣にしている人というのは、誰がしているとか、どこかで流行っているとかは関係なくやっています。それも「ただ健康のため」という範囲を超えて、自分の生活に取り入れている人がいます。

菜食が不殺生と結びつくように、「身土不二」も自然の摂理に従う思想として生き方や考え方に入りこんできます。桜沢如一さんをはじめとする、指導者の方たちが書いた本の内容は、食と体の関係だけにとどまりません。基本が陰陽思想なのですが、そこから中庸に始まり、平和とかの話になります。ある種の宗教のような面があることは、たいがいの人が感じるでしょう。

最近のおしゃれな装丁の入門書からは、その手の宗教っぽさは薄れています。時代が要求する形に従うのは、今に始まったことではありません。桜沢如一さんの著作には「戦争に勝つ食べ物」という本だってあるのです。同盟国の総統ヒトラーとムッソリーニがベジタリアンであることを賛美し、我が帝國国民もそれに倣うべしと、ものものしい文体で綴っています。

これはもちろん本心ではなかったかもしれません。あの時代に生き残るために唯一選ぶしかない、苦渋に満ちた決断だったのでしょう。当時の実践者はどんな思いで、指導者の言説を読んだのかわかりません。ひたすら従った人もいれば、変節を嫌って遠ざかった人もいたと思います。

ある人にマクロビオティックがもし思想として身についているのならば、今後社会の趨勢がいかに変わろうとも、また指導者の言説がどう転ぼうとも、さしたる影響は受けないでしょう。その人が自分で考えるための礎として、それを選び、主体性をもとに実践しているのならば、もはや「マクロビオティック」という名称にこだわりを持つことさえなくなるはずです。

思想者ではなく、「信者」になること、それも教義ではなく「ある個人」や「ある団体」や「ある書物」の信者になってしまうことは不幸なことです。主体性の放棄と言う点では、「更年期に大豆イソフラボン」の三日坊主と変わりはないのかもしれません。

物を食うという行動一つとっても、自分が選んでする以上は、そこに自らと一度向き合う姿勢が要求されて当然といえます。多くの「○○で健康になりましょう」流健康法が、そこから逃げるための手段としてしか使われえないのが実情です。それに比べるとマクロビオティックは、自省のチャンスが豊富にあります。また同時代に隆盛を極めた、西式健康法や、今でも根強い人気のある肥田式強健法なども、同じことが言えます。(注.私はどれもしていません)こういうものは何をするかという以上に、どう付き合うか、どう向き合うかということのほうが重要なのかな、という気が私はしておるんです。皆さんはどう思われますか。

posted by 院主です at 20:33| 大阪 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | ニュースを読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
は、は、は・・・・・
またもやこの間残したはずのコメントがない・・・・・

どうも、「確認する」しか押していない模様です。
ぐすん。

最近日記更新なさってないんですね。
私は玄米食べてますよ。
結構おいしいです。

牛乳はうちにはおきませんが、バターはときどき使うし、外食で乳製品とってしまいます。
厳格にやることはできませんね〜。

でも、玄米は体に良い気がしますよ。
まず第一にお通じに良い!です。
ダンナのお墨付きです。
Posted by かなにゃん at 2006年07月28日 14:09
かなにゃん様 こんにちは。

PCの前に座る時間が取りにくく、更新が途絶えております。

玄米はおいしいですね。私も好きです。でも家内の実家から送られてくるお米が、これまた実においしいので、とりあえず白米が続いています。

バターはマーガリンよりはマシですよ。乳製品も嗜好品として時々取らないと、あまり厳格にしていると楽しくないですしね。
Posted by 院主です at 2006年07月29日 23:57
初めてコメントします。
桜沢さんの「戦争に勝つ食べ物」という本は
いまどこかで出版されていますか?
桜沢さんがヒトラーを礼賛していたという話を耳にしたことがあり、実際にはどういうことなのか知りたいと思ってネット検索していました。もし、何か他に情報は関連の文章などご存知でしたら教えて頂けませんでしょうか。よろしくお願いします。
Posted by ミケ at 2007年01月04日 14:38
はじめまして、ミケさん。

「戦争に勝つ食べ物」ですが、これは現在は出版されていないはずです。また、CI協会に聞いてもわからないと思います。これは著作物の中に数えられていないからです。

私がこの本を見たのは、大阪にある“ケンショク「食」資料室”というところです。

ネットで調べますと、http://nekogaita.cocolog-nifty.com/blog/2006/06/post_f723.htmlのようなページがありました。昭和16年に「健康戦線の第一線に立ちて」という本が出版されているようで、古書点に出回ることがあるようです。もしかしたら題名が違うだけで、同じような内容かもしれません。
Posted by 院主です at 2007年01月05日 13:54
ありがとうございました。
今、マクロビオティックについて少しずつ勉強している最中なのですが、こちらのブログも大変興味深く読ませて頂いています。桜沢先生については、反戦運動家といわれている反面、ヒトラー礼賛していたという話も聞いたことがあったので、ちょっと混乱していたのです。ちかくの図書館にも当たってみます。ありがとうございました。
Posted by ミケ at 2007年01月06日 22:17
ミケ様

桜沢さんも戦前は戦後と同じく平和主義を唱えていました。戦時中の状況では、彼に限らず、何かしら指導的な立場にある人たちは、同じような態度を取らざるを得なかったでしょう。生きるために仕方なかったのではないですか。

ヒトラーを賛美している文章では、彼が菜食主義者で禁酒禁煙の“健康的な生活”をしている点で持ち上げてました。ドイツでは今でも禁煙運動が高まると、このことが取り上げられるようですね。
Posted by 院主です at 2007年01月09日 22:15
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